ジェンダーサミット10の開催報告

 ジェンダーサミット10・分科会4「ダイバーシティ推進に係る評価手法の提示」は、情報・システム研究機構 機構長 藤井良一氏がジェンダーサミット10幹事会からの要請を受けて取りまとめを行いました。分科会委員として沖縄科学技術大学院大学のMachiDilworth氏、日本大学の大坪久子氏、京都大学の中島正愛氏、IRIS科学・技術経営研究所のイリス・ヴィーツォレックら男女共同参画推進のエキスパートが科学・技術の各分野から加わり、講演者の選定や議論する内容等について開催の約1年前から意見の交換を進めてきました。

 科学・技術分野における男女共同参画の推進度合や直面している課題は文化的・歴史的背景や宗教観によっても異なること、今回のサミットがアジアパシフィックをターゲットとしていること等を考慮し、分科会4では米国・英国・ドイツ・中国・マレーシアからそれぞれ5人の講演者を招へいすることに決まりました。

・Sonja Ochsenfeld-Repp (German Research Foundation, ドイツ),
 "EqualOpportunities in Research and Academia"
・Linxiu Zhang (Chinese Academy of Science 中国),
 "Gender Equality and GreenDevelopment"
・Kellina M. Craig-Henderson (National Science Foundation, 米国),
 "Developing Evaluation Methods for Diversity in Research: Challenges,Pitfalls and Strategies"
・Rubiyah Yusof (Malaysia-Japan International Institute of Technology, マレーシア), 
 "Empowerment of Women in STEM: Malaysian Perspective"
・Sarah Dickinson Hyams (Equality Challenge Unit, 英国),
 "Athena SWAN:Improving gender diversity in STEMM"

 サミット当日、分科会4のセッション前半では、上記の5人の講演者からそれぞれ異なる文化的背景を持つ国々における男女共同参画推進の現状と課題をご紹介いただきました。(講演スライドは次の記事でご覧いただけます
 
 セッション後半部分では聴衆からの質問に答える形で講演者が意見を述べた後、分科会委員が取りまとめた各国の推進機関の評価指標を一覧とした統合リストを資料として配布し、これから本格的に組織改革に取り組む大学・研究機関にとって何が最も有効で波及効果の高い取組になりうるかの評価指標について議論しました。ポルシャ社のエリザベス・ポリッツァー氏による巧みなリードで、講演者と聴衆とが一体となっての白熱した議論が盛り上がり、途切れることのない意見の応酬はセッション終了時間まで続きました。
 
 セッション終了後、講演者と委員は会場から場所を移し、提言作成のための白熱した議論が続けられました。ジェンダー平等の推進を加速させるための効果的な手法のアイデアの中には、日本の状況を踏まえた提案もありました。競争的研究資金の選考・評価のプロセスに申請機関のジェンダー平等推進の度合いが影響するような仕組みの提案など、挑戦的なアイデアに講演者・委員からの強い賛同が集まり、これも提言のひとつに盛り込まれました。その成果は即座にプレゼンテーションの形にまとめられ、最終日午後のプレナリーセッション中で大坪委員から発表されました。
 
 サミットでの反響から、分科会4の成果であるスタンダードな評価手法が、日本の科学・技術の研究現場におけるジェンダー平等の推進に貢献することを、関係者の多くから期待されているとの印象を受けました。分科会4の委員は今回のサミット終了後も引き続き共通指標の策定と関連機関への提言により日本とアジア各国のジェンダー平等の推進に取り組んでいく予定です。




「分科会4」会場風景(予想を超える数の聴衆が来場され満席となりました)



「分科会4」の司会を務める 情報・システム研究機構 藤井機構長