第四回「羽ばたけ 日本の女性研究者」の公開に寄せて

情報・システム研究機構 国立情報学研究所 新井 紀子 

 2010年7月、日米女性研究者のシンポジウム(Japan-US Symposium 2010 -Connections-) が開催されました。テーマは「女性研究者のエンパワーメントと新領域創成に向けた日米シンポジウム」。単に懇親を深めるだけでなく、具体的な共同研究につなげたい、とアメリカ側は多くの若手女性研究者を引き連れて国立女性教育会館に到着していました。

 最初の晩の懇親会で、私は少なからぬ米国側女性研究者から「共同研究相手となる女性研究者をどうやって探せばよいのか?」と質問されました。「このパーティには自分の分野の研究者がいないのだが、どうすれば女性共同研究者を探すことができるのか?」そう尋ねられ、うまく返事ができない自分がそこにいました。

 確かにそうなのです。日本政府は、これまで男女平等参画社会を支援するために、女性研究者支援モデル育成事業など様々な施策を打ち出しては来ました。いくつかの大学には女性研究者を支援する拠点が形成され、男女平等参画を広報するためのウェブサイトがいくつも作られました。けれども、いざ女性研究者を探そうとしても、検索する手段がほとんど何もないのです。特に、英語での情報が限られていることに気づきました。

 シンポジウム2日目、私は情報学者としてある提案をしました。それは、日本の女性研究者のデータベースを作成してウェブ上で日本語・英語の両方で公開し、関心をもつ領域にいる女性研究者をすぐに検索できる「女性研究者総覧」を構築しよう、ということだったのです。けれども、具体的なメリットが見えない企画のために、多忙な女性研究者に特別の協力をお願いするのには無理があるでしょう。そこで考えたのが、大学共同利用機関として、情報・システム研究機構が運用していた研究者データベースResearchmapに性別欄を設け、Researchmapのデータから女性研究者の情報だけを抽出して「女性研究者総覧」を自動生成するというアイデアです。これならば、普段から研究業績管理のために利用しているResearchmapから自動的にデータが抜き出されるだけですから、女性研究者には余計な負担がかかりません。おまけに、データの整備費用や事務経費をかけずに女性研究者総覧を構築することができます。

 その思い付きからほぼ1年。このたび、女性研究者総覧「羽ばたけ 日本の女性研究者」を公開することができました。現在は母体となるResearchmapの登録研究者数が限られているためまだ170名ほどのデータベースにすぎませんが、2011年11月にJSTが運営している研究者データベースReaDとResearchmapが統合されることで、登録研究者数は一気に20万人を超えることが確実となっています。そのとき、「羽ばたけ 日本の女性研究者」サイトが、まさに羽ばたき、日本の男女平等参画推進の一助になればと願っています。