男女共同参画社会基本法(1999年施行)に基づく第二次男女共同参画基本計画(2005年12月決定)では、社会のあらゆる分野において、2020年までに、リーダーシップの地位を占める女性の割合を少なくとも30%にするという目標が掲げられました。続いて、女性活躍推進法(2015年施行)に基づく「第5期科学技術基本計画(2016-2020年度)」には、女性研究者の新規採用割合に係る2020年度目標値(自然科学系全体30%、理学系20%、工学系15%、農学系30%、医・歯・薬学系30%)が記載されました。このような計画に沿って展開した女性研究者支援モデル育成事業、次代を担う女性活躍促進施策などを通じて、日本における女性研究者の環境は整備され、採用割合は着実に増加しています。しかしながら、欧州諸国や米国に比べてその割合は依然として低く、上位職の採用、なかでも幹部登用については遅々として進んでいないのが現状です。
大学共同利用機関法人はこれまで、女性研究者の採用、上位職昇進のプロセスの透明化、女性研究者の育成・排出に関わる数値目標と施策のバランスなどの方策を探り、ダイバーシティ研究環境の実現に向けた施策を実施してきました。2019~2020年度に実施する本調査分析事業では、その成果を発展させ、情報・理工学および環境・人文学を広くカバーする情報・システム研究機構(ROIS)、人間文化研究機構(NIHU)のそれぞれが有する調査スキル、国際研究ネットワークを通じて海外先行事例の調査分析に取り組みます。
具体的には、成功事例と評されるイギリス独自の表彰制度(アテナ・スワン)を軸に、わが国のダイバーシティ研究環境の実現を牽引・阻害する要因について、欧米諸国、アジア諸国と比較分析します。同時に、表彰制度の運営施策についても、各国の情報を収集します。こうした活動を通じて、第5期科学技術基本計画に記載された目標値の達成に資する、日本独自のジェンダー推進のための評価指標の設定と評価方式、導入手法を提案します。