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Workshop on Gender Research and Innovation 2018を開催しました

 情報・システム研究機構では、去る6月15日、科学技術振興機構(JST)との共同で、「Workshop on Gender Research and Innovation 2018」と題したワークショップを機構本部(神谷町)で開催しました。ジェンダーを含むデータの作成と解析、データを用いた評価に携わる研究者約30名が参加し、最新のデータを含む研究成果の発表と活発な質疑応答が行われました。

 本ワークショップは昨年5月東京において開催されたジェンダーサミット10のフォローアップとなる日本学術会議主催の学術フォーラム(6月14日、乃木坂)の専門分科会的な位置づけで、ジェンダーサミット10を主催したJST渡辺美代子副理事の開会挨拶に続き、ジェンダーとダイバーシティの分野で指導的な役割を担うスタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授から、医学・機械学習・ロボット工学等の科学技術におけるジェンダー視点からのイノベーションの可能性についての講演が行われました。
 続いて、日本におけるエビデンスベースの調査研究を概観したいとの渡辺氏からの呼びかけに応じた発表者9名の講演と、2名の参加者からの話題提供がありました。会の前半は、論文数の男女差に関する分析や、男女混合のグループ形成に高い生産性がある等の知見が紹介され、後半は機械学習を応用した研究者データベースの整備、ジェンダー視点からのデータ解析の実例が紹介されました。特に、既存のデータを新たな切り口で解析しようとした研究成果に多くの参加者の興味と質問が集中しました。
 ワークショップ終盤には、当機構の藤井良一機構長から、日本のジェンダー平等を一層進めるため男女差に関するエビデンスベースの解析が重要である点が強調され、そのために整備されるべきデータベースについて参加者からの意見を求めたいとの指針が示されました。文部科学省の久保真季科学戦略官からの総括コメントと、当機構の桂理事(男女共同参画担当・遺伝研所長)による閉会挨拶でワークショップは終了しました。

 参加者からは「非常に学びが多く、今後さらにエビデンスを積み重ね分析を行う重要性を感じた」とのコメントが寄せられ、研究活動における男女差の有無について今後、エビデンスベースの調査研究を進めて行く重要性がワークショップ参加者間で強く共有されるものとなりました。
 当機構の男女共同参画推進室とJSTダイバーシティ部門は本テーマに関するワークショップの開催を通じ、エビデンスベースでの調査研究の推進及びデータベース整備のための活動を今後も継続していく予定です。

 

事業評価結果が公開されました。

当機構で平成26年度から平成28年度まで実施した「女性研究者研究活動支援事業」の事後評価結果が下記に公開され、総合評価「A」となりました。
(JST)科学技術人材育成費補助事業


以下は、評価結果の抜粋です。

(1)評価結果
 総合評価「A」(所期の計画と同等の取組が行われている)
(目標達成度:b、取組:a、取組の成果:a、実施体制:a、継続性・発展性:a)

(2)評価コメント
 機構長のリーダーシップにより、分野の異なる4研究所を機構として適切にまとめ、各研究所の実状に即した形で女性研究者の活躍促進に取り組み、女性承継研究者の採用比率が目標の25%を上回る等、一定の成果を上げたことは評価できる。女性研究者の母集団が特に少ない学問分野の問題を的確に把握し、研究者の公募に女性限定公募を導入し、一般公募においても女性応募者が増加する状況を作り出したことは評価できる。今後は、優れた女性研究者を育成し大学等他機関へ転出させるとともに、優れた女性研究者を大学等他機関から機構に積極的に迎え入れる仕組を構築することを期待する。

【機構内のお知らせ】来年度の研究支援員制度の募集を開始しました!

平成30年度第1期研究支援員制度の利用者募集について
【締切りました】


 本機構では、平成26年度の「女性研究者研究活動支援事業」の採択を機に、当該年度から研究支援員制度を設け、出産や子育て、介護等のライフイベント中の女性研究者をサポートしてまいりました。
 上記補助事業が終了した平成29年度については、対象者の範囲を特に支援を必要とする男性研究者にも拡大して本制度を実施いたしましたが、来年度も引き続き本制度を実施することとしましたので、研究支援員の配置を希望される方は、募集要項に従って申請ください。
(今回から通年の申請が可能です)。

◆研究支援員制度 募集要項(様式のダウンロードもこちらから)

◆研究支援員制度のQ&A

I-URIC/4機構連携男女共同参画シンポジウムを盛況裡に開催しました!

 大学共同利用機関法人(I-URIC)の 4機構(人間文化研究機構、自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構、情報・システム研究機構)は、「男女共同参画の視点から研究環境の改善に向けて」と題したI-URIC/4機構連携男女共同参画シンポジウムを、平成29年11月29日に国立国語研究所講堂(立川市)で開催しました。男女共同参画のテーマで初めての4機構合同主催で行われた本シンポジウムには、うち2機構の機構長をはじめ4機構所属の研究者らを含む120名が出席しました。

 シンポジウムは3部構成に分かれ、文部科学省科学技術・学術政策局人材政策推進室長の伊藤賢氏の来賓挨拶に続き、第1部では、今年5月にジェンダーサミット10を主催した科学技術振興機構の渡辺美代子氏と、今年3月にジェンダーレポートを出版したエルゼビア・ジャパン社のルディービーヌ・アラニヤ氏から、世界的なジェンダー平等の流れの中での日本の位置づけと今後の方向性を俯瞰する講演が行われました。

 続く第2部前半では男女共同参画学協会連絡会の大坪久子氏から国の科学技術基本計画等の施策に反映された学協会の調査・提言等の過去15年の取組と現在の日本の課題について、情報・システム研究機構の藤井良一氏からジェンダーサミット10分科会4「ダイバーシティ推進に係る評価手法の提示」における海外招聘者5名の講演概要と今後期待されるアクションについて、それぞれ講演が行われました。
 第2部後半は、4機構の男女共同参画担当者から各機構の取組や各研究分野の課題等の話題提供とパネルディスカッションが行われました。

 参加者を内部に限定した第3部では、自然科学研究機構の小泉周氏が司会を行い、4機構内の男女共同参画に関する課題についてワークショップ形式で熱心な議論を盛り上げました。

 こうした取り組みを通じて、大学共同利用機関法人4機構では、それぞれの機構における研究環境のより一層の改善につとめ、ダイバーシティに配慮しながら共同利用・共同研究を積極的に推進していくこととしています。

 

「無意識のバイアス(偏見)」を知っていますか?

人間は意識できる物事に比べてはるかに大量の情報を無意識の領域で処理していると言われています。しかし無意識レベルの思考や判断を自覚・制御することはかなり困難です。
 
無意識レベルでの思考は、成長の過程で生育環境や教育、社会からの様々な情報入力によって、個々人で違った形で形成され、本人は取捨選択することができません。環境入力に基づいて形成される無意識領域の思考回路が、無意識のバイアス(Unconscious bias)と呼ばれるものの基盤となっています。
 
無意識のバイアスは、もとは動物の生存戦略として生じたものと考えられています。たとえば、生命をおびやかす外敵に出会ったら、襲われる前にまず逃げることが先決でしょう。一刻を争う判断によって危機的な状況から逃れる、ショートカットの反応として発達してきた脳機能のひとつが無意識のバイアスの根本であると言われています。
 
無意識のバイアスは、程度や性質の差こそあれ、誰でも持っています。個人には何ら責任がありません。バイアスがかかっていない思考と比較して、判断に要する時間が圧倒的に短くて済むという利点もありますが、生命に危険が及ぶような外敵が減った、管理された現代社会では弊害のほうが目立つようになり、様々な問題が起こり得ることが報告されてきています。
たとえば、人種、男女、年齢、肥満の度合いなどで人を判断し、差別することは良くないされていますが、そうした多様性に接した時、どの程度ご自身の心の動きを把握できているでしょうか?
 
心にひそむ無意識のバイアスを自覚するだけで、判断はより公平なものに修正ができるようになります。経営戦略として多様性を取り込み、業績向上につなげようとする民間企業では、その潜在的な危険性が理解され、社員研修にも取り入れられるようになっています。
 
 
一方、大学や研究機関などの研究の現場では、どのような弊害が考えられるのか。今回新たに、男女共同参画学協会連絡会によって編集されたコンパクトなリーフレットに、その情報がまとめられています。
「無意識のバイアス」について興味を持たれた方は、ご一読をおすすめいたします。
 
以下のリンクから無料でダウンロードできます。
 

研究現場での「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」の実例についてのご意見もお待ちしています。
 
 
男女共同参画推進室 コーディネーター 中村淑子

(統数研)平成29年度第1回ランチョンセミナー

平成29年6月15日
統計数理研究所 平成29年度第1回ランチョンセミナー
「ドイツの男女共同参画と子育て事情:社会学者として、一児の父親として」を開催しました。

 ドイツ・デュッセルドルフから研究調査のため来日された社会学研究者、クリスティアン・タークソルド(Christian Tagsold)氏(ハインリッヒ・ハイネ大学 現代日本学研究室 教授)を演者としてお迎えし、今年度最初の研究所男女共同参画推進室主催となるランチョンセミナーを開催しました。
 タークソルド氏は、大学院で日本学を専攻するために来日されたことをきっかけに、その後の研究活動やサッカー等のスポーツ振興を通じ20年以上にわたって日本とかかわってこられました。現在は現代日本学研究室で教鞭をとっておられ、日本語も堪能で、今回の男女共同参画推進に関するセミナーも日本語でお話いただきました。
 セミナー前半では、タークソルド氏ご自身が約1年の育休を取得された立場からの実体験をもとに、現在のドイツでの子育て環境をご紹介いただきました。ドイツは地方自治体によって実施されている支援策が異なり、旧東西ドイツの社会システムに由来する違いや、南部・北部の経済的な地域格差によっても支援内容に違いがあること、またドイツにも少子高齢化の問題がある一方、中東からの移民の増加を労働力不足の解消につなげようとする動きがあり、移民への教育も重要視されているとのことでした。
 前半は時事問題の絡む話題提供となり難しい用語も頻発しましたが、ターグソルド氏の温かな人柄、質問に対する真摯な姿勢に加え、日本語で対応いただけたことで、セミナー後半の質疑応答も盛り上がりました。育休中の研究活動について、国や自治体からの経済面でのサポートに関するドイツと日本の共通点や違いについて等、出席者全員から活発に意見が出されました。男性が積極的に育児に参加することのメリットについては、父親も母親と同等に子供とのつながりが出来る点であるとタークソルド氏が答えられたのが非常に印象的でした。
 今年度から統計数理研究所の男女共同参画推進室長となられた伊藤副所長からは、これから子育てを経験する若い世代の男性教員の参加を得て、ざっくばらんな意見交換が出来るよい機会となったとのコメントを頂きました。直前の開催通知にもかかわらずご参加くださった皆様方、優れた演者をご紹介くださった伊高静先生に感謝いたします。

 男女共同参画推進室では、ランチョンセミナーでお話しくださる演者の方(国内外)を募集しています。どうぞよろしくお願いいたします。

JST「情報管理」に、エッセイ「女性研究者のリアル」が掲載されました

 科学技術振興機構(JST)が発行する月刊誌「情報管理」7月号に、国立情報学研究所 坊農真弓先生のエッセイが連載されています。
連載第一回「女性研究者のリアル」は、web上で自由にお読みいただけます。
 
 女性の多様な生き方が認められるようになった昨今ですが、それでも産む役割は生物学的な制約として女性の側にかかっています。
沢山の選択肢があるように見えながら、必ずしも希望のものを選べるわけではないのも現実です。
 
 ご自身の生い立ちから、第二子を希望される著者は、研究も育児もおろそかには出来ないと人一倍の努力を重ねたことから、期待に相反して体調を崩されてしまいます。
 
 そこで、一人の女性研究者を重い現実(リアル)から救いだした「一条の光」は、いったい何だったのか?
 
 現実を乗り越え、新たなステージへと飛躍された著者は、これから挑戦の時を迎えるだろう若手研究者へのエールとして、このエッセイを書かれました。エッセイの中では情報・システム機構の女性研究者活動支援事業の企画のひとつ、平成27年の「論文合宿」についても触れてくださっています。
また在外研究での貴重なご経験も本エッセイの大きな特色のひとつとなっています
 
 女性研究者の”real”と”ideal”を克明に描いた連載第1弾、下記リンクからお読みいただければと思います。
 
 

ジェンダーサミット10プレゼン資料

発表スライドです。


・Sonja Ochsenfeld-Repp (German Research Foundation, ドイツ),
 "Equal Opportunities in Research and Academia"

[Ochsenfeld-Repp]_Session4_GenderEqualityDFG_Horizon2020.pdf


・Linxiu Zhang (Chinese Academy of Science 中国),
 "Gender Equality and Green Development"

[Linxiu Zhang]_20170526_GS10_presentation.pdf




・Kellina M. Craig-Henderson (National Science Foundation, 米国),
 "Developing Evaluation Methods for Diversity in Research: Challenges, Pitfalls and Strategies"

GS10 CraigHenderson.pdf




・Rubiyah Yusof (Malaysia-Japan International Institute of Technology, マレーシア),
 "Empowerment of Women in STEM: Malaysian Perspective"

[Rubiyah Yusof]_STEM_survey_updated_19May2017_survey.pdf




・Sarah Dickinson Hyams (Equality Challenge Unit, 英国),
 "Athena SWAN:Improving gender diversity in STEMM"

GS10 Athena SWAN May 2017 final for SDH.pdf

ジェンダーサミット10の開催報告

 ジェンダーサミット10・分科会4「ダイバーシティ推進に係る評価手法の提示」は、情報・システム研究機構 機構長 藤井良一氏がジェンダーサミット10幹事会からの要請を受けて取りまとめを行いました。分科会委員として沖縄科学技術大学院大学のMachiDilworth氏、日本大学の大坪久子氏、京都大学の中島正愛氏、IRIS科学・技術経営研究所のイリス・ヴィーツォレックら男女共同参画推進のエキスパートが科学・技術の各分野から加わり、講演者の選定や議論する内容等について開催の約1年前から意見の交換を進めてきました。

 科学・技術分野における男女共同参画の推進度合や直面している課題は文化的・歴史的背景や宗教観によっても異なること、今回のサミットがアジアパシフィックをターゲットとしていること等を考慮し、分科会4では米国・英国・ドイツ・中国・マレーシアからそれぞれ5人の講演者を招へいすることに決まりました。

・Sonja Ochsenfeld-Repp (German Research Foundation, ドイツ),
 "EqualOpportunities in Research and Academia"
・Linxiu Zhang (Chinese Academy of Science 中国),
 "Gender Equality and GreenDevelopment"
・Kellina M. Craig-Henderson (National Science Foundation, 米国),
 "Developing Evaluation Methods for Diversity in Research: Challenges,Pitfalls and Strategies"
・Rubiyah Yusof (Malaysia-Japan International Institute of Technology, マレーシア), 
 "Empowerment of Women in STEM: Malaysian Perspective"
・Sarah Dickinson Hyams (Equality Challenge Unit, 英国),
 "Athena SWAN:Improving gender diversity in STEMM"

 サミット当日、分科会4のセッション前半では、上記の5人の講演者からそれぞれ異なる文化的背景を持つ国々における男女共同参画推進の現状と課題をご紹介いただきました。(講演スライドは次の記事でご覧いただけます
 
 セッション後半部分では聴衆からの質問に答える形で講演者が意見を述べた後、分科会委員が取りまとめた各国の推進機関の評価指標を一覧とした統合リストを資料として配布し、これから本格的に組織改革に取り組む大学・研究機関にとって何が最も有効で波及効果の高い取組になりうるかの評価指標について議論しました。ポルシャ社のエリザベス・ポリッツァー氏による巧みなリードで、講演者と聴衆とが一体となっての白熱した議論が盛り上がり、途切れることのない意見の応酬はセッション終了時間まで続きました。
 
 セッション終了後、講演者と委員は会場から場所を移し、提言作成のための白熱した議論が続けられました。ジェンダー平等の推進を加速させるための効果的な手法のアイデアの中には、日本の状況を踏まえた提案もありました。競争的研究資金の選考・評価のプロセスに申請機関のジェンダー平等推進の度合いが影響するような仕組みの提案など、挑戦的なアイデアに講演者・委員からの強い賛同が集まり、これも提言のひとつに盛り込まれました。その成果は即座にプレゼンテーションの形にまとめられ、最終日午後のプレナリーセッション中で大坪委員から発表されました。
 
 サミットでの反響から、分科会4の成果であるスタンダードな評価手法が、日本の科学・技術の研究現場におけるジェンダー平等の推進に貢献することを、関係者の多くから期待されているとの印象を受けました。分科会4の委員は今回のサミット終了後も引き続き共通指標の策定と関連機関への提言により日本とアジア各国のジェンダー平等の推進に取り組んでいく予定です。




「分科会4」会場風景(予想を超える数の聴衆が来場され満席となりました)



「分科会4」の司会を務める 情報・システム研究機構 藤井機構長